親族全員が敵になった日

私が結婚して6年程の歳月が過ぎたある日、主人の祖父が亡くなりました。今から20年以上前の話です。
主人は幼い頃に父親を亡くしておりましたので、私にとっては義理の祖父・義理の母・主人と私の4人での暮らしが始まった形でした。ちょうどその頃やっと長男に恵まれ、とりあえず嫁としての最初の大役を果たし終えたと思っていた矢先の出来事でした。
96歳で亡くなった義祖父には子供が多く、その筆頭は68歳の長男でした。私や主人のことをとてもよく可愛がってくれていた義叔父でした。
ところが、驚いたことに義祖父は自分のすべての遺産を私の主人に託すとの遺言を公証役場で残しており、親しかった関係が一変しました。
義祖父としては、お正月に数時間程度しか顔を見せない息子娘らより、毎日一緒に暮らし、愚痴を聞き世話をしていた私の主人のほうが何倍か可愛かったのでしょう。主人は幼い頃から父親に恵まれず、そのぶんお爺ちゃんっ子だったので尚更です。
亡くなった本人の意思はともかく、そんな遺言を遺された親族一同は猛然と攻撃に乗り出してきました。当時まだ30歳にも満たなかった私の主人が、一族のすべての財産を持つ事になるかもしれない瀬戸際です。68の長男を筆頭にした親族の全員が主人に訴状を提出してきた時には、さすがに卒倒する思いでした。
騒動の経緯はご想像通り、数年にわたり双方が弁護士を立てて、幾度となく調停を繰り返してきました。現在は関係もあらかた修繕し終え、穏やかな日々を送っております。
今こうして思い返すとき、これがもし、一家族のことで済まないような、例えば会社を興していたような義祖父だったら……もしも義祖父が大きななにかの権利を有していたら……などと考えると、こんなに平穏ではいられなかったのかもしれないと思うのです。義祖父はよかれと思って遺してくれたに違いない遺言が大きな騒動になり、長年の親族の縁の亀裂にさえなりかねない状況でした。
あれから20年、私自身が50を越え、自分の両親の心配などを募らせる日々。余計な心配のようですが、どうか何事もないような用意をしておいてよね……と、ついつい願ってしまうのです。

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